子どもの「読み書きが苦手」「計算がどうしてもできない」という困りごとが学習障がい(LD)かどうか確認するには、まず地域の教育相談センターや発達支援センターに相談することが最初のステップです。学習障がいは脳の神経発達の特性によるものであり、努力不足や家庭環境が原因ではありません。早期に専門家へ相談することで、その子に合った支援につながりやすくなります。 「「友達と遊べない」ASDの子どもに見られるコミュニケーションの特徴と家庭でできる具体的な関わり方」もあわせてご覧ください。
宿題をするたびに涙が出る。板書をノートに写せない。九九がなかなか覚えられない。わが子のそういった姿を毎日目の当たりにしながら、「もっと丁寧に教えてあげればよかったのか」「私の接し方が悪かったのか」と自分を責め続けている保護者の方は、決して少なくありません。当社には、そうした切実な思いを抱えた保護者の方からのご相談が日々届きます。
大切なことをはじめにお伝えします。学習障がいは、親の育て方でも、子どもの怠け心でも、頭の良し悪しでもありません。脳の情報処理の仕方に特性があるために、特定の学習に困難が生じている状態です。そして、適切な支援を早く始めることで、子どもが自分なりのやり方で学び、自信を取り戻していくケースはたくさんあります。
学習障がいとは何か、「勉強が苦手」との違い
学習障がい(LD:Learning Disabilities)は、全体的な知的発達には大きな遅れがないにもかかわらず、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習領域だけに著しい困難が生じる、神経発達の障がいです。2026年現在、文部科学省や医療現場では「限局性学習症(SLD)」という診断名も広く使われるようになってきました。
「勉強が苦手」という状態は、学習習慣が整っていない、授業の進め方が合わない、家庭でのサポートが不足しているといった環境的・経験的な要因で生じることが多く、環境や関わり方を変えることで改善が見られやすいのが特徴です。一方で学習障がいは、脳の神経生理的な仕組みの違いから来ているため、「もっと練習すれば大丈夫」では解決しないことがほとんどです。同じ問題を何十回練習しても定着しないのに、好きなゲームのルールは瞬時に覚えられる——そういったアンバランスさが目立つ場合、学習障がいの可能性を視野に入れることが重要です。
読字・書字・算数、三つの主な特性
学習障がいは大きく三つのタイプに分けられます。「読字障がい(ディスレクシア)」は文字を正確にすらすらと読むことが難しく、音と文字の対応づけに特性があります。日本では平仮名の読み書きが小学校低学年の重要な課題になるため、この時期に気づかれることが多いです。詳しくは「発達障害テスト: 症状と対策の理解するために」でも関連する情報を紹介しています。
「書字障がい(ディスグラフィア)」は文字を書くこと自体に困難があり、字のバランスが崩れる、同じ字を何度書いても形が定まらない、思ったことを文字で表現するのに著しく時間がかかるといった特徴が見られます。「算数障がい(ディスカリキュリア)」は数の概念や計算、数字同士の関係を把握することへの困難で、繰り上がり・繰り下がりが混乱する、九九を覚えることに強い抵抗感があるといった形で現れます。これらは単独で現れることもあれば、複数が重なることもあります。
ADHDやASDと重なることがある
学習障がいは、ADHD(注意欠陥多動性障がい)やASD(自閉症スペクトラム症)と併存するケースが少なくありません。注意の持続が難しいADHDの特性が読み書きの困難を強める場合や、ASDによる認知の偏りが計算の文章題を極端に難しく感じさせる場合もあります。そのため、一つの特性だけに着目して支援を組み立てるのではなく、その子の全体像を多面的に把握することが大切です。詳しくは「【発達障がい】グレーゾーンの子どもに必要な支援策とは?」も参考になります。
年齢別に見る、気づきのサイン
学習障がいのサインは、年齢によって現れ方が変わります。「もしかして」と思った段階で、その時々の子どもの様子を丁寧に見ていくことが、早期支援への第一歩になります。 「ソーシャルスキルトレーニング:子どもが社会で輝くための第一歩」もあわせてご覧ください。
幼児期(3〜5歳ごろ)
この時期のサインとして多いのは、ことばの発音が不明瞭で聞き取りにくい、絵本の読み聞かせを楽しめない、しりとりや音遊び(ライム遊び)が苦手といった「音韻意識」に関わる困難です。文字に興味を持ちにくかったり、自分の名前を書くことへの強い拒否感が見られたりする子もいます。ただし、幼児期は発達の個人差が大きい時期でもあるため、一つの様子だけで判断するのは難しく、気になる場合は専門家に相談することを優先してください。
小学校低学年(1〜2年生ごろ)
就学後、読み書きや計算の学習が始まると、学習障がいの特性が明確になりやすくなります。平仮名や片仮名をなかなか覚えられない、音読のときに行を飛ばしてしまう、鉛筆をうまく動かせず字を書くのに非常に時間がかかる、1桁の足し算・引き算でも指を使わないと難しいといった姿が見られる場合があります。宿題をめぐって毎日1〜2時間かかってしまい、子どもが泣き出したり「学校に行きたくない」と言い始めたりするケースもあります。
小学校高学年以降
低学年のうちは懸命に努力でカバーしていた子が、3〜4年生以降に急に成績が落ちるパターンもよく見られます。文章が長くなった教科書を読むのがつらくなる、作文や読書感想文を書くことに強い苦手意識を持つ、算数の文章問題で何を問われているのかが整理できないなど、学年が上がるほど困難が大きくなりやすいのが学習障がいの特徴のひとつです。自己肯定感の低下が重なると、勉強への拒否や学校への行き渋りに発展することもあります。詳しくは「発達特性を持つ子どもが登園拒否!行き渋りの原因と今すぐできる対策」で解説しています。
「うちの子もそうかも」と思ったら、最初に動くこと
気になる様子があると、「様子を見よう」「もう少し練習させれば大丈夫」と思いながら時間が過ぎていく——そういったご家庭は非常に多いです。しかし、子どもが「できない自分はダメだ」と傷ついている時間が長くなるほど、自己肯定感の回復には時間がかかります。「もしかして」と思ったら、早めに動くことが子どもへの最大のサポートになります。 「ADHDの子どもへの接し方|親がやりがちなNG対応と今日から使える声かけのコツ」もあわせてご覧ください。
まず相談できる場所
最初の相談先として活用しやすいのは、地域の教育委員会が設置する「教育相談センター(教育センター)」です。無料で相談でき、学習面の困難についての聞き取りや、必要に応じて心理検査の案内を受けることができます。また、市町村の「発達支援センター(発達障がい者支援センター)」では、心理士による発達検査や、医療機関への紹介など、より専門的な対応を受けられます。
学校の担任や特別支援コーディネーターへの相談も大切な一歩です。学校でどんな場面に困っているか、授業中の様子や宿題の状況を伝えることで、個別の配慮(板書のサポート、テスト時間の延長など)が検討されるきっかけになります。2026年現在、多くの学校で「合理的配慮」の提供が進んでいます。学校への相談に躊躇しているという方は、「広汎性発達障害(PDD):自閉症スペクトラムとの比較から理解する」の記事で、学校との連携について触れた部分も参考にしてみてください。
専門的な検査・診断を受けるには
より詳しい評価が必要と判断された場合は、小児科(発達専門外来)や児童精神科、または神経小児科での受診が選択肢になります。WISC-Ⅴ(知能検査)などを通じて、認知的な強みと弱みのプロフィールが明らかになります。診断名がつかないグレーゾーンの場合も、検査結果をもとに支援の方向性を考えることができます。医療機関の予約待ちが長い地域では、教育相談センターや民間の発達支援事業所を先行して活用することも現実的な選択肢です。
「診断がなければ支援を受けられない」わけではありません。困っている様子がある時点で、相談し、動くことに意味があります。
家庭でできる関わり方——「できない」より「できた」を積み重ねる
学習障がいがあっても、わが子の得意なことや好きなことは必ずあります。字を書くのは苦手でも、話すことや記憶力は飛び抜けて高い子も多く、それ自体が大きな強みです。家庭での関わり方の基本は、「できないことをできるようにさせる」ではなく、「できることを一緒に喜び、積み重ねる」ことです。
日常の中でできる具体的なサポート
読み書きが苦手な子には、デジタルツールを積極的に活用する方法が効果的です。音声読み上げ機能や、かな入力・フリック入力によるタイピング、スマートフォンのカメラで黒板を撮影する(学校と相談の上で)といった手段は、「書けない」という壁を越えて思考を表現する力を引き出します。計算が難しい子には、タイル教材や数え棒など、数を視覚・触覚で体験できる具体物を使う方法が、頭の中のイメージを助けます。
宿題は「全部やり切る」ことよりも「取り組んだこと自体」を認める声かけが重要です。30分で疲れ果てた子どもに「まだここまでしかできていないの」という言葉は、子どもの意欲を著しく削いでしまいます。「今日は難しいところを3問やれたね」という一言が、翌日の取り組みにつながっていきます。
親自身が「一緒に学ぶ姿勢」を見せること
保護者自身が「失敗してもやってみる」「知らないことは調べる」という姿を見せることも、子どもの安心感につながります。ある保護者の方から伺ったエピソードでは、お子さんが算数の文章題を何度解いても分からず泣いていたとき、「じゃあ一緒にやってみよう。お母さんも難しいと思ったら聞いてみよう」と声をかけたところ、子どもが初めて「解けた」という体験を笑顔でできたといいます。正解より先に、「一緒にいる」という安心感が子どもの学びを動かすことがあります。
学校・園との連携をどう進めるか
学校や園との連携は、子どもへの支援を広げる上で欠かせない柱です。しかし、「先生に相談したら、大げさだと思われないか」「診断が出ていないと対応してもらえないのでは」という不安から、なかなか踏み出せない保護者の方も多いです。
担任・特別支援コーディネーターへの伝え方
学校への相談では、「うちの子はこういう診断があります」ではなく「こういう場面でこんな困りごとが起きています」という具体的な状況を伝えることが出発点になります。たとえば「板書を写すのに時間がかかって、授業の内容が追えていない様子です」「漢字テストになると極端に点数が下がります」といった事実を丁寧に共有することで、担任が授業内で取りやすい配慮が増えていきます。
学校には「特別支援コーディネーター」という専門的な役割を担う教員が配置されており、個別支援計画の作成や、必要に応じた外部専門家との連携を調整してもらえる場合があります。担任だけでなく、特別支援コーディネーターへの相談窓口を積極的に活用してください。
保育所等訪問支援という選択肢
学校や園の現場に専門スタッフが直接出向き、環境調整や担任へのアドバイスを行う「保育所等訪問支援」という制度があります。LaZoでも、この訪問支援を活用して学校現場との橋渡し役を担うことで、子どもが在籍学級で過ごしやすくなった事例があります。「学校と家庭のどちらも一人で対応しなければならない」と感じている保護者の方には、こうした制度の活用が精神的な負担を大きく減らすことにつながります。
児童発達支援・放課後等デイサービスで受けられるサポート
学校や家庭での関わりと並行して、専門的な支援事業所を活用することも重要な選択肢です。児童発達支援(未就学児対象)や放課後等デイサービス(就学後対象)は、福祉サービスとして受給者証を取得することで利用でき、学習面の困難を含む多様な特性に対応したプログラムを受けることができます。 「放課後等デイサービスとは?: 児童発達支援の重要性と役割」もあわせてご覧ください。
学習障がいに関連した支援プログラム
放課後等デイサービスでは、ビジョントレーニング(目と手の協応を高める)、音韻認識トレーニング(文字と音のつながりを強化する)、ソーシャルスキルトレーニング(SSTによるコミュニケーション支援)など、その子の特性に応じたプログラムが提供されています。ビジョントレーニングについては、「【驚愕】ビジョントレーニング効果で学習能力が劇的にアップする理由」でも詳しく解説しています。SSTについては「SSTで子どもの『お友達とのやり取り』はどう変わる?保護者が知っておきたい成長の見方」もご覧ください。
支援事業所を選ぶ際は、どんな専門スタッフが在籍しているか、プログラムの内容が子どもの特性と合っているか、保護者との情報共有の頻度はどの程度か、といった点を確認することが大切です。LaZoでは、0歳から18歳まで途切れのない一貫した支援を提供しており、学習面の困難を抱える子どもへの個別サポートにも対応しています。
「得意」を伸ばす場としての活用
当社がサポートに関わったあるご家庭の例をご紹介します。小学2年生の男の子は、読み書きに強い困難があり、毎日の音読練習が苦痛で登校を渋り始めていました。放課後等デイサービスでビジョントレーニングと音韻認識のプログラムを開始したところ、3か月後には音読のスピードが格段に上がり、本人が「読めた」という実感を持てるようになりました。同時に、もともと得意だったブロック遊びを活かした造形活動を取り入れたことで、「ここは自分が認められる場所」という安心感が生まれ、学校への行き渋りも次第に落ち着いていきました。苦手なことへのアプローチと、得意を伸ばす環境を組み合わせることが、子どもの自己肯定感を支える鍵になります。
保護者が一人で抱え込まないために
子どもの学習の困難に気づいた保護者は、「もっと早く気づいてあげれば」「自分の育て方がいけなかったのか」と自責の気持ちを持ちやすいです。しかし、学習障がいは誰のせいでもありません。そして、支援は一人で考えなくていいのです。
専門家・学校・家庭が連携して子どもを囲む「チーム支援」が、最も子どもの助けになります。保護者の方が「何が起きているのか」を理解し、言葉にして周囲に伝えられるようになると、チームが動き出します。相談することは、「弱さ」ではなく「子どものために動く強さ」です。
| 相談・支援の場 | 対象・特徴 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 教育相談センター(教育委員会) | 学習・生活上の困りごと全般。就学前〜高校生まで対応 | 無料 |
| 発達支援センター(市区町村) | 発達検査・心理士相談・医療機関紹介など | 無料〜一部負担 |
| 小児科・児童精神科 | 診断・心理検査(WISC等)・医療的支援 | 保険適用あり |
| 放課後等デイサービス | 就学後の子ども。個別支援プログラム・学習サポート | 受給者証利用で自己負担1割程度 |
| 保育所等訪問支援 | 学校・園への専門スタッフの訪問・環境調整 | 受給者証利用で自己負担1割程度 |
この記事を読んでいるあなたが今感じている「何かおかしい」という直感は、子どもを一番近くで見ている保護者だからこそのアンテナです。その気づきを大切にしながら、一歩ずつ動いていきましょう。探求的な学びの環境づくりについては「探求学習の効果を児童期に最大化する方法【保存版】」も合わせてご覧いただくと、子どもの学びに対する視点が広がります。
よくある質問
診断がなくても学校に配慮をお願いできますか?
診断書がなくても、困っている状況を学校に伝えることで合理的配慮を求めることができます。「障害者差別解消法」の改正により、2024年以降は民間事業者を含む学校現場でも合理的配慮の提供が義務化されています。まずは担任や特別支援コーディネーターに子どもの困りごとを具体的に伝えることから始めてください。
放課後等デイサービスを利用するには何が必要ですか?
利用には「障害児通所支援受給者証(受給者証)」の取得が必要です。お住まいの市区町村の福祉窓口(障害福祉課など)に申請します。診断書が必要な場合とそうでない場合があり、自治体によって手続きが異なるため、まず窓口に電話で確認することをおすすめします。申請から受給者証の発行まで、概ね1〜2か月程度かかることが多いです。
学習障がいは大人になっても続きますか?
学習障がいの特性は成人後も続くことが多いですが、適切な支援や本人なりの対処法(補償戦略)を身につけることで、日常生活や仕事への影響を大幅に小さくすることができます。「治る」「治らない」という見方よりも、「その人に合ったやり方を見つけていく」という視点で支援を考えることが大切です。
子どもに「学習障がいかもしれない」とどう伝えればいいですか?
年齢や子どもの理解に合わせた伝え方が重要です。「あなたの脳は、文字の読み方を覚えるのに少し時間がかかる仕組みになっているだけで、頭が悪いわけじゃないよ」というように、否定的でなく事実として伝えることが基本です。専門家(心理士など)と相談しながら、どう伝えるかを一緒に考えてもらうことも選択肢のひとつです。
学習障がいの子どもに家庭学習をどう進めればいいですか?
「全部やり切る」ことにこだわらず、子どもが取り組める分量と時間を設定し、できたことを具体的に認める声かけを続けることが基本です。音声読み上げアプリや計算補助ツールを活用することも有効で、ツールへの依存を心配する必要はありません。「別のやり方で学べる」ことを子どもと一緒に探す姿勢が、長期的な意欲につながります。
どの相談窓口から始めたらいいか迷っています。優先順位はありますか?
子どもが学校に通っている場合は、まず学校の特別支援コーディネーターへの相談と、地域の教育相談センターへの相談を並行して進めることがスムーズです。医療的な診断を求める場合は小児科(発達外来)や児童精神科の予約を早めに入れることをおすすめします。いずれも「相談するだけ」でも構いませんので、ハードルを下げて一歩目を踏み出してください。
学習障がいがあっても、将来は自立できますか?
学習障がいがあっても、自分の強みを活かした仕事や生活スタイルを確立して活躍している人はたくさんいます。早い段階で自分の特性を知り、得意なことを伸ばす環境に出会えることが、自立への大きな力になります。大切なのは「苦手をなくすこと」ではなく、「自分らしい方法を見つけること」です。


