運動が苦手な子どもに「できた!」の瞬間を増やす、家庭でできる身体遊びと声かけの工夫

運動が苦手な子どもには、家庭で小さな成功体験を積み重ねる工夫が有効です。ボール転がしや新聞紙ビリビリ遊び、布団の山登りなど、身近な素材で「できた!」を実感できる身体遊びを取り入れましょう。声かけでは「すごいね!」よりも「ボールをしっかり見てたね」と具体的な行動を認める言葉を選び、失敗を責めずプロセスを肯定することが自己肯定感を守ります。発達性協調運動障害(DCD)などの特性がある場合は、児童発達支援や放課後等デイサービスでの運動療育も併せて検討すると、より個別化された支援が受けられます。 「運動が苦手な子どもの背景にあるもの|発達的な特徴と専門的な運動療育による支援の道筋」もあわせてご覧ください。

「うちの子、なんだか身体を動かすのが苦手みたい」「体育の時間になると、教室の隅でじっと見ているだけ」「公園に連れて行っても、遊具で遊ばずにベンチに座っている」。そんな我が子の様子に、不安や焦りを感じている親御さまは少なくありません。周りの子どもたちが元気に走り回る姿を見るたびに、「このままで大丈夫だろうか」と心配になることもあるでしょう。

運動が苦手な背景には、単なる「練習不足」や「やる気がない」だけではなく、発達性協調運動障害(DCD)や筋緊張の低さ、感覚統合の特性など、身体的・神経的な要因が隠れている場合があります。そうした特性を持つ子どもにとって、周囲と同じように身体を動かすことは想像以上に難しく、繰り返し失敗を経験することで「自分は運動ができない」という思い込みが強まり、自己肯定感が低下してしまうリスクもあります。

大切なのは、無理に他の子と同じレベルを目指すのではなく、その子自身が「できた!」「楽しい!」と感じられる小さな成功体験を積み重ねることです。家庭でできる身体遊びと、子どもの心を育む声かけの工夫を取り入れることで、運動への苦手意識を和らげ、自信を取り戻すきっかけを作ることができます。この記事では、発達支援の現場で実際に行われている視点をもとに、親御さまが今日からすぐに実践できる具体的な方法をご紹介します。

目次

運動が苦手な子どもの背景にあるもの

運動が苦手な子どもには、目に見える「できない」という結果の裏に、さまざまな背景が存在しています。その背景を理解することで、親御さまは「なぜうちの子は他の子と同じようにできないのだろう」という疑問から解放され、適切なサポートの方向性を見出すことができます。

発達性協調運動障害(DCD)は、知的な遅れがないにもかかわらず、身体の協調性やバランス感覚、運動の計画・実行に困難を抱える状態を指します。ボールを投げる、縄跳びをする、自転車に乗るといった、多くの子どもが自然に習得する動作が、DCDの特性を持つ子どもにとっては非常に難しく感じられます。このような特性は、医療機関や発達支援の専門家による評価を通じて初めて明らかになることが多く、親御さまが「練習すればできるようになる」と考えて繰り返し練習させても、かえって子どもの自信を奪ってしまう場合があります。

筋緊張の低さ(低緊張)も、運動が苦手な子どもによく見られる特徴です。筋肉に力が入りにくいため、姿勢を保つことが難しく、長時間座っていることや、ジャンプや走るといった全身運動に疲れやすさを感じます。また、感覚統合の特性により、自分の身体がどこにあるか(固有受容覚)や、どれくらいの力加減で動かせばよいか(力のコントロール)がわかりにくい子どももいます。こうした特性は、外見からはわかりにくいため、周囲から「ただ怠けている」「やる気がない」と誤解されやすく、子ども自身も「自分はダメな子だ」と感じてしまうことがあります。

運動が苦手な子どもは、体育の授業や友達との外遊びで失敗を繰り返すうちに、「どうせできない」と諦めたり、運動そのものを避けるようになったりすることがあります。その結果、運動経験がさらに減り、ますます身体を動かす機会を失う悪循環に陥ってしまうのです。親御さまが「うちの子は運動が嫌いなんだ」と感じている場合でも、実は「嫌い」なのではなく「失敗が怖い」「自信がない」という感情が根底にあるケースが少なくありません。

発達性協調運動障害(DCD)とは

発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder、DCD)は、日常生活や学校生活で必要な運動技能の習得や実行が、年齢や知的能力に比して著しく困難な状態を指します。文部科学省の調査では、小中学生の約5〜6%にDCDの特性が見られると報告されており、決して珍しいものではありません。

DCDの特性を持つ子どもは、ボールをキャッチする、靴ひもを結ぶ、ハサミを使う、自転車に乗るといった動作が極端に苦手です。これらの動作には、複数の身体部位を同時に協調させたり、視覚情報と身体の動きを統合したりする能力が求められますが、DCDの子どもにとってはそのプロセスがうまく機能しません。そのため、「何度やってもできない」「頭ではわかっているのに身体が動かない」という状況に陥りやすく、強いフラストレーションを感じることがあります。

DCDは、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)といった他の発達特性と併存することも多く、複合的な困難を抱えている場合があります。医療機関や児童発達支援センターでの専門的な評価を受けることで、その子に合った支援の方向性が見えてきます。詳しくは「【発達】児童発達支援はどこに相談すれば受けられる?窓口選びから初回利用まで迷わず進む道筋」で解説しています。

運動の苦手さが自己肯定感に与える影響

運動が苦手な子どもは、体育の授業や友達との遊びの中で「できない自分」を繰り返し体験します。クラスメイトが簡単にできることが自分にはできない、チームでの活動で足を引っ張ってしまう、そんな経験が積み重なると、「自分はダメだ」「みんなに迷惑をかけている」という否定的な自己像が形成されてしまいます。

自己肯定感の低下は、運動場面だけにとどまらず、学習や対人関係にも影響を及ぼします。「どうせ自分にはできない」という思い込みが強まると、新しいことに挑戦する意欲が失われ、失敗を避けるために行動を制限してしまうようになります。また、友達から遊びに誘われても「自分は下手だから」と断ったり、体育の時間に仮病を使ったりするなど、回避行動が見られることもあります。

親御さまが「もっと頑張って」「練習すればできるようになるよ」と励ましたつもりでも、子どもにとってはプレッシャーになり、かえって自信を失わせてしまう場合があります。大切なのは、結果ではなくプロセスを認めること、そして「できた!」という小さな成功体験を積み重ねる環境を整えることです。詳しくは「【ASD】ASDの子が『できない』と泣いて諦めてしまうとき、親ができる自己肯定感を守る関わり方」で解説しています。

家庭でできる身体遊び10選

家庭で取り組む身体遊びは、特別な道具や広いスペースがなくても、子どもの「できた!」を引き出すことができます。ここでは、運動が苦手な子どもでも無理なく楽しめる身体遊びを10種類ご紹介します。いずれも、発達支援の現場で実際に取り入れられている遊びをベースにしています。

1. ボール転がしキャッチ

床に座って、親子で向かい合い、柔らかいボールをゆっくり転がし合う遊びです。投げるよりも難易度が低く、ボールの動きを目で追う力や、タイミングを合わせる力を養います。最初は短い距離から始め、慣れてきたら少しずつ距離を伸ばしたり、ボールの大きさや重さを変えたりしてバリエーションを増やします。ボールをキャッチできたときには「ちゃんと手を出せたね!」と、具体的な行動を褒めることで達成感を味わえます。

2. 新聞紙ビリビリ遊び

新聞紙を思い切り破ったり、丸めたりする遊びは、手指の力や握力を育てるだけでなく、ストレス発散にもなります。破った新聞紙を空中に投げて「雪だ!」と言いながら集めたり、丸めた新聞紙ボールで的当てをしたりと、遊びを展開できます。感覚統合の視点からも、紙の手触りや破れる音が感覚刺激となり、身体の感覚を育てる効果が期待できます。

3. 布団の山登り

布団やクッションを重ねて「山」を作り、登ったり降りたりする遊びです。バランスを取りながら身体を動かすことで、体幹や足の筋力が自然に鍛えられます。低い山から始めて、子どもが慣れてきたら高さや傾斜を調整します。「頂上についたね!」「慎重に降りられたね!」と、小さな達成を言葉で認めてあげましょう。

4. 風船バレー

風船はゆっくり落ちてくるため、ボールが苦手な子どもでも扱いやすく、成功体験を得やすい遊びです。親子で風船を打ち合ったり、床に落とさないようにキープしたりすることで、目と手の協調性やタイミングを合わせる力が育ちます。風船の色や大きさを変えることで、視覚的な楽しさも加わります。

5. トンネルくぐり

段ボールや椅子でトンネルを作り、その中をくぐる遊びです。身体を低くしてバランスを取りながら進むことで、空間認識や身体イメージの発達を促します。トンネルの先に「宝物(おもちゃなど)」を置いておくと、目標ができてモチベーションが高まります。

6. まねっこダンス

音楽に合わせて、親が簡単な動きをして、子どもがそれをまねる遊びです。「手を叩く」「ジャンプする」「くるりと回る」など、単純な動作から始めます。リズム感や身体のコントロール、視覚情報を身体の動きに変換する力が育ちます。子どもが自分でダンスを考えて親がまねする「逆まねっこ」も、自己表現の機会になります。

7. ペットボトルボウリング

空のペットボトルをピンに見立て、ボールを転がして倒す遊びです。的が大きく安定しているため、初めてでも成功しやすく、「倒せた!」という達成感が得られます。倒れたペットボトルの数を数えたり、親子で交代で遊んだりすることで、ルールのある遊びの経験にもなります。

8. タオル綱引き

タオルの両端を親子で持ち、引っ張り合う遊びです。全身の力を使うため、筋力や体幹の強化につながります。力加減を調整しながら、「せーの!」の掛け声でタイミングを合わせることで、コミュニケーションの要素も含まれます。勝ち負けよりも、一緒に楽しむことを重視しましょう。

9. 洗濯ばさみつまみ遊び

洗濯ばさみを段ボールや厚紙の端に挟む遊びです。指先の力や手指の巧緻性を育てるとともに、集中力も養います。「赤い洗濯ばさみを探して挟もう」「10個挟めたら終わり」など、目標を設定することで達成感を味わえます。細かい作業が苦手な子どもには、大きめで柔らかい洗濯ばさみを使うと取り組みやすくなります。

10. 動物まねっこ歩き

ウサギ、カエル、クマ、ペンギンなど、さまざまな動物の動きをまねして歩く遊びです。四つ這いで進んだり、ジャンプしたり、腕を広げてバランスを取ったりと、多様な身体の使い方を経験できます。「今度は何の動物にする?」と子どもに選ばせることで、主体性も育まれます。詳しくは「幼児期の『遊び』が子どもの脳と心を育てる理由|発達特性がある子にも今日から使える関わり方」で解説しています。

声かけのコツと自己肯定感を守る関わり方

子どもの「できた!」を増やすためには、身体遊びそのものと同じくらい、親御さまの声かけや関わり方が重要です。運動が苦手な子どもは、失敗体験が積み重なることで「自分はダメだ」という思い込みを抱えていることが多く、不用意な言葉や態度が自己肯定感をさらに傷つけてしまうリスクがあります。ここでは、発達支援の現場で実践されている声かけのコツと、子どもの心を守る関わり方を具体的にご紹介します。

結果ではなくプロセスを認める

運動が苦手な子どもにとって、「できた」「できなかった」という結果だけで評価されることは、大きなプレッシャーになります。大切なのは、結果ではなく、その過程で見せた努力や工夫、挑戦する姿勢を認めることです。たとえば、ボールをキャッチできなかったとしても、「ボールをしっかり見ていたね」「手を伸ばすタイミングが良くなったね」と、具体的な行動を言葉にして伝えます。

「すごいね!」「上手だね!」といった抽象的な褒め言葉よりも、「さっきより2回多く跳べたね」「最後まで諦めなかったね」といった具体的なフィードバックの方が、子どもは自分の成長を実感しやすくなります。また、親御さまが何に注目しているのかが明確になるため、子ども自身が「次はこうしてみよう」と考える力も育ちます。

失敗を責めず、安心感を提供する

運動が苦手な子どもは、失敗することへの恐怖心が強く、「間違えたらどうしよう」「怒られるかもしれない」という不安を抱えていることがあります。そのため、失敗したときに親が「どうしてできないの?」「もっと頑張りなさい」と叱ったり、がっかりした表情を見せたりすると、子どもは挑戦することそのものを避けるようになってしまいます。

失敗したときこそ、「大丈夫だよ」「もう一回やってみようか」と、安心感を提供する声かけが重要です。親御さまが失敗を責めず、「失敗しても受け入れてもらえる」と感じられる環境があれば、子どもは安心して新しいことに挑戦できます。また、「お母さん(お父さん)も昔、縄跳びが全然できなかったんだよ」と、親自身の経験を共有することで、子どもは「失敗は恥ずかしいことじゃないんだ」と感じることができます。

比較をせず、その子自身の成長を見る

「お兄ちゃんはできたのに」「〇〇ちゃんはもっと上手だよ」といった他者との比較は、子どもの自己肯定感を大きく傷つけます。運動が苦手な子どもは、周囲との差を痛いほど感じており、そのことで既に傷ついている場合が多いのです。親御さまが他の子どもと比較する言葉を使うと、「自分は期待に応えられていない」という思いが強まり、ますます自信を失ってしまいます。

比較するべきは、他の子どもではなく、「過去のその子自身」です。「先週よりも長く跳べたね」「最初のときより、バランスが取れるようになったね」と、その子自身の成長を言葉にして伝えることで、子どもは「自分は少しずつできるようになっている」という実感を持つことができます。成長のペースは一人ひとり違うものであり、その子なりの歩みを大切にする姿勢が、自己肯定感を守る土台となります。

子どもが主体的に選べる環境を作る

「今日は縄跳びの練習をしなさい」と一方的に指示されると、子どもは「やらされている」と感じ、モチベーションが下がります。一方で、「今日は何をして遊ぶ?」と選択肢を提示し、子ども自身が選べる環境を作ると、主体性が育ち、遊びへの意欲も高まります。

たとえば、「ボール遊びと風船バレー、どっちがいい?」「今日は布団の山登りに挑戦してみる?」と問いかけることで、子どもは「自分で決めた」という感覚を持つことができます。その結果、たとえ途中で失敗しても、「やってみたい」と思った気持ちが支えになり、粘り強く取り組む力が育ちます。また、子どもが「今日はやりたくない」と言ったときには、無理強いせず、「じゃあまた明日やってみようか」と受け止める柔軟さも大切です。

運動療育と家庭の連携

家庭での身体遊びと並行して、専門的な運動療育を受けることで、子どもの運動能力や自己肯定感の向上がより効果的に進む場合があります。運動療育は、発達性協調運動障害(DCD)や感覚統合の特性を持つ子どもに対して、身体の使い方や感覚の調整を専門的に支援するプログラムです。ここでは、運動療育の内容や、家庭との連携の重要性について解説します。

運動療育とは

運動療育は、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの福祉施設で提供される、運動を通じた発達支援のプログラムです。作業療法士や理学療法士、保育士などの専門スタッフが、一人ひとりの子どもの特性や発達段階に合わせた運動プログラムを設計し、個別またはグループで実施します。

運動療育では、ただ運動技能を向上させるだけでなく、身体の感覚(固有受容覚、前庭覚、触覚など)を育てたり、運動の計画を立てる力(プランニング)を養ったり、成功体験を積み重ねることで自己肯定感を高めたりすることを目的としています。たとえば、トランポリンや平均台、ボールプール、サーキット遊びなど、子どもが楽しみながら取り組める活動を通じて、身体の使い方や感覚の調整を学びます。

運動療育の特徴は、子どもの「できた!」を最大化する環境設定がされていることです。難易度を細かく調整し、子どもが「少し頑張ればできる」レベルの課題を提示することで、失敗を最小限に抑えながら成功体験を積み重ねることができます。また、専門スタッフが子どもの身体の動きや反応を丁寧に観察し、どのような支援が必要かを見極めてくれるため、家庭では気づきにくい特性や課題が明らかになることもあります。

家庭と運動療育の連携が生む相乗効果

運動療育で学んだ身体の使い方や遊びを、家庭でも継続することで、子どもの成長がより加速します。たとえば、療育の場でトランポリンを使ったジャンプ練習をしている場合、家庭でも布団の上でジャンプ遊びを取り入れることで、同じ動作を繰り返し練習でき、身体に定着しやすくなります。

また、療育スタッフと家庭が情報を共有することで、子どもの得意なことや苦手なこと、効果的な声かけの方法などを共有でき、一貫性のある支援が可能になります。たとえば、「〇〇ちゃんは、視覚的に見本を見せると理解しやすい」「褒めるときは具体的な行動を言葉にすると喜ぶ」といった情報を家庭でも活かすことで、子どもは安心して取り組むことができます。

ある親御さまは、放課後等デイサービスでの運動療育を利用し始めてから、「子どもが家でも積極的に身体を動かすようになった」と話しています。療育の場で「できた!」という成功体験を積み重ねたことで、「運動は楽しい」と感じられるようになり、家庭でも自ら遊びに誘ってくるようになったそうです。このように、療育と家庭が連携することで、子どもの意欲や自己肯定感が相乗的に高まります。

相談先と支援の選び方

運動療育を受けるためには、まず地域の児童発達支援センターや保健センター、医療機関などに相談することが第一歩です。発達の特性や運動の困難さについて専門的な評価を受けることで、その子に合った支援の方向性が見えてきます。受給者証を取得することで、児童発達支援や放課後等デイサービスを利用でき、費用の一部が公費で負担されます。

支援施設を選ぶ際には、見学や体験利用を通じて、施設の雰囲気やスタッフの関わり方、プログラムの内容を確認することが大切です。子どもが安心して過ごせる環境かどうか、スタッフが子どもの特性を理解し、個別に対応してくれるかどうかを見極めましょう。また、家庭との連携を大切にしているか、定期的に子どもの様子を共有してくれるかといった点も重要なポイントです。

北摂エリア(吹田市、豊中市、箕面市、茨木市など)には、運動療育を専門とする放課後等デイサービスや児童発達支援事業所が複数あります。LaZo株式会社が運営する「SMASPO」などの施設では、運動を通じた発達支援に特化したプログラムを提供しており、子どもの「できた!」を引き出す環境づくりを大切にしています。

成功体験を積み重ねた子どもたちの変化

家庭での身体遊びや運動療育を通じて、子どもたちがどのように変化していくのか、具体的な事例をいくつかご紹介します。これらは発達支援の現場で実際に見られた変化をもとにしており、親御さまが今後の関わり方を考える際の参考になるでしょう。

ケース1:ボール遊びが怖かった5歳の男の子

5歳のAくんは、保育園でボール遊びをするたびに泣いてしまい、友達の輪に入れませんでした。親御さまは「運動が嫌いなのかもしれない」と感じていましたが、実際にはボールが顔に当たるのではないかという恐怖心が強く、視覚と身体の協調がうまく取れていないことが背景にありました。

家庭では、まず柔らかい風船を使った遊びから始めました。風船はゆっくり動くため、Aくんは安心して手を伸ばすことができ、「キャッチできた!」という成功体験を積み重ねることができました。次に、柔らかいボールを床で転がし合う遊びに移行し、徐々にボールに慣れていきました。親御さまは「ボールをちゃんと見てたね」「手を伸ばすのが上手になったね」と、具体的な行動を認める声かけを続けました。

3か月後、Aくんは保育園のボール遊びにも参加できるようになり、友達と一緒に笑顔で遊ぶ姿が見られるようになりました。親御さまは「小さな成功を積み重ねることで、こんなに変わるんだと驚きました」と話しています。

ケース2:体育の時間に自信を失っていた7歳の女の子

小学2年生のBさんは、体育の授業で縄跳びや鉄棒がうまくできず、「自分は運動ができない」と思い込んでいました。友達が次々と技をクリアしていく中、Bさんだけができないことが続き、体育の時間が苦痛になっていました。親御さまは「練習すればできるようになる」と励ましましたが、Bさんは「どうせできない」と諦めてしまっていました。

家庭では、縄跳びではなく、まず「ジャンプする」ことそのものを楽しむ遊びから始めました。布団の山を登り降りしたり、音楽に合わせてリズムジャンプをしたりと、縄跳びとは直接関係のない遊びを通じて、身体を動かす楽しさを取り戻していきました。また、放課後等デイサービスでの運動療育も併用し、専門スタッフのサポートを受けながら、スモールステップで縄跳びの練習を進めました。

半年後、Bさんは縄跳びで連続10回跳べるようになり、クラスの友達から「すごいね!」と言われたことで、大きな自信を得ました。親御さまは「結果を急がず、プロセスを大切にすることの重要性を実感しました」と振り返っています。

ケース3:感覚統合の特性があった6歳の男の子

6歳のCくんは、身体の力加減がわかりにくく、物を強く握りすぎて壊してしまったり、逆に力が入らずに物を落としてしまったりすることが多くありました。また、バランスを取ることが苦手で、よくつまずいたり転んだりしていました。親御さまは「不注意なのかもしれない」と感じていましたが、専門機関で評価を受けた結果、感覚統合の特性があることがわかりました。

家庭では、タオル綱引きや新聞紙ビリビリ遊びなど、力の入れ方を体験できる遊びを取り入れました。また、洗濯ばさみつまみ遊びを通じて、指先の力加減を調整する練習もしました。運動療育では、トランポリンやバランスボールを使った遊びを通じて、身体の感覚を育てるプログラムを受けました。

1年後、Cくんはつまずくことが減り、友達とも安心して遊べるようになりました。親御さまは「特性を理解し、適切な支援を受けることで、こんなにも変わるんだと実感しました」と話しています。

親が一人で抱え込まないために

運動が苦手な我が子を見て、親御さまは「自分の育て方が悪かったのではないか」「もっと早くから何かしてあげるべきだった」と自分を責めてしまうことがあります。しかし、子どもの運動の苦手さは、親の責任ではありません。発達性協調運動障害(DCD)や感覚統合の特性は、生まれつきの神経発達の特性であり、親の関わり方や育て方とは直接関係がないのです。

大切なのは、一人で悩みを抱え込まず、専門家や支援機関に相談することです。地域の保健センターや児童発達支援センター、医療機関、放課後等デイサービスなど、相談できる窓口は数多くあります。専門家の視点から子どもの特性を理解し、適切な支援を受けることで、親御さまの不安も軽減され、子どもも安心して成長していくことができます。

また、同じような悩みを持つ親御さま同士のつながりも、大きな支えになります。親の会やオンラインコミュニティ、支援施設で開催される保護者向けの勉強会などに参加することで、「自分だけじゃないんだ」という安心感を得ることができます。情報交換を通じて、新しい支援方法や関わり方のヒントを得ることもできるでしょう。

子どもの成長は、一人ひとり違うペースで進みます。周りの子どもと比較せず、その子自身の小さな成長を見つけ、喜び合うことが、親子の信頼関係を深め、子どもの自己肯定感を育てる土台となります。親御さまが笑顔でいられることが、子どもにとって何よりの安心感であり、成長の原動力になるのです。

よくある質問

家庭での身体遊びは毎日やらないといけませんか?

毎日である必要はありません。子どもの体調や気分に合わせて、週に2〜3回、10〜15分程度から始めるのが無理なく続けるコツです。大切なのは頻度よりも、子どもが「楽しい」と感じられることです。無理強いせず、親子で楽しめるペースを見つけてください。

運動が苦手な子どもに習い事をさせた方がいいですか?

習い事を始める前に、まず家庭で「身体を動かすのは楽しい」という感覚を育てることが大切です。習い事は、子ども自身が興味を持ったタイミングで、個別指導やスモールステップで進めてくれる教室を選ぶと、失敗体験を減らせます。無理に通わせると、かえって運動嫌いになる可能性があります。

発達性協調運動障害(DCD)かどうか、どこで診てもらえますか?

小児科、児童精神科、発達外来のある病院で評価を受けることができます。また、地域の児童発達支援センターや保健センターでも相談窓口があります。医師や作業療法士による検査や観察を通じて、DCDの特性があるかどうかを判断してもらえます。

家庭での遊びと運動療育、どちらが効果的ですか?

どちらか一方ではなく、両方を組み合わせることで相乗効果が生まれます。運動療育では専門的な評価と個別プログラムを受け、家庭では日常的に身体を動かす楽しさを体験する。この連携が、子どもの成長を最も効果的に支えます。

子どもが「できない」と泣いて諦めてしまうとき、どう声をかければいいですか?

まず「大丈夫だよ」と安心感を与え、「今日はここまで頑張ったね」とプロセスを認めてあげましょう。無理に続けさせず、「また明日やってみようか」と選択肢を示すことで、子どもは安心して次に挑戦できます。失敗を責めず、挑戦したこと自体を褒めることが大切です。

学校の体育の時間に配慮してもらうことはできますか?

できます。担任の先生やスクールカウンセラーに相談し、子どもの特性や困りごとを伝えることで、個別の配慮や支援を受けられる場合があります。また、保育所等訪問支援を利用すれば、専門スタッフが学校に出向いて環境調整をサポートしてくれます。

運動療育を受けるには受給者証が必要ですか?

児童発達支援や放課後等デイサービスを利用する場合には、受給者証が必要です。市区町村の障害福祉課や子育て支援課に相談し、申請手続きを行います。診断がなくても、発達の困りごとがあれば申請できる場合があります。詳しくは自治体の窓口で確認してください。

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