発達障害にはその症状の違いにより、いくつかの分類があります。
主だったところでいえば、自閉症スペクトラム症、ADHD(注意欠如・多動性障害)、LD(学習障害)などです。
どの分類においても、本人にとって社会生活をしていくのに、困り感・生きづらさを伴います。
近年では『自閉症スペクトラム症』にすべて統括されましたが、ジョブス君が診断されたころの分類も記しておきますね。
自閉症で主に問題となるのは
1.言葉の遅れ
2.こだわりの強さ
3.知的な遅れ 等です。
- その中で、言葉の遅れ、知的な遅れがなく、こだわりの強さが目立つものを『アスペルガー症候群』。
- 知的な遅れはないものの、言葉の遅れやこだわりが強いタイプを、『高機能自閉症』。
- この3つの症状全てがそろっている時には『自閉症』と診断されました。
- 又、この3つの症状に当てはまりながらも、『アスペルガー症候群』や『高機能自閉症』のその他の特徴に、キッパリと納まらない色々なタイプを、『広汎性発達障害』と呼び、広い意味で、自閉傾向があり、生きづらさがあり、サポートが必要な子として診断名がつけられました。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
1.不注意(主に、物忘れのひどさ、ケアレスミス等)
2.多動性(じっとしていられない、落ち着きのなさ等)
3.衝動性(相手の話を聞き終わらないうちに話してしまう。
興味の惹かれたものがあると一直線にそちらに向かってしまう。等)
等の問題が見られます。
そしてLD(学習障害)とは、全般的な知的発達に遅れはないものの、主に「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」「運動」等能力に限り、困難が生じる発達障害のことです。
我が家のジョブス君には、『アスペルガー症候群』と『LD(学習障害)』が見られました。
小学校時代の困り感をいくつかお話しますね。
ジョブス君の小学校時代
まず、1年から6年にかけて一番大きな問題は、集団行動が苦手な事でした。
本人的に言えば、4~5人程度までは何とか一緒にいられるものの、それ以上になると落ち着かず、抵抗感が出るようでした。
なので、全校朝会や発表会、運動会のように、全校生徒が集まるようなときは、決まって「参加したくない」という大きな抵抗が出てきます。
支援学級の担任の先生は、その気持ちを尊重しながら、「じゃぁ5分だけ、ずっと後ろで見てみよう!」というところから始め、5分いれた時には、一緒に喜び、褒めてあげていました。
少しずつ、参加できる時間を増やし、体育館のずっと後ろから、みんなと一緒の場所に・・・少しずつ少しずつの成長をみんなで共有し喜びを分かち合いました。
大きな変化
5年生になった頃、大きな変化が現れました。
先生が「ジョブス君が見つけられなかった!」と驚いたように報告してくださいました。
その頃は、集団の中に一緒に座っていても、なんだか浮いた感じの存在感があり、離れた場所からでもジョブス君を見つけることができていたのに、その日は、すっかり周りに溶け込んでいて見つけられず、思わずどこか別の場所へ行ってしまったのでは?と心配さえした。というのです。
その後もだんだんとそんな状況が増えていき、6年の頃には周りの理解もあって、協力学級に一人でいられる時間がどんどん増えていきました。
運動会の様子
では運動会はどうだったのか。
走るのはそんなに苦手ではないジョブス君に、ちょっとだけ期待しながら、でも大きな不安も抱えながら参観した一年の運動会。
何とか走り出したものの、観客席をキョロキョロ見渡しながら、マイペースで走ってきます。
そして、私を見つけると立ち止まり近寄ろうとしてしまいました!
「ちゃんと走ってゴールまでいくのよー!」と何度か大声で言い聞かせながらも、納得がいかないジョブス君。結局先生と一緒にゴールしました。
6年までの運動会は、ハラハラドキドキの連続で、いくつかの競技のうち、半分くらい参加ができればOKという感覚で、気持ちを切り替えました。
先生方は、楽しみにしているだろう私の気持ちを慮って、時に競技とは関係がないお役目を作り、ジョブス君の参加をできるだけ多く増やす努力をしてくださいました。
例えば、ゴールの場所に一緒にいて、順番の書いた紙を渡す役や、応援の旗を振る役などです。
発表会
発表会は、ジョブス君にとって、一年で一番嫌いな日でした。
歌も踊りも芝居も、何もかも全てがジョブス君の苦手な分野で、しかも全校生徒が一緒に活動する日。さらに父兄の皆さんまでいらして、体育館はぎゅうぎゅう詰めです。
運動会も苦手ですが、発表会は建物の中なので、もっと圧迫感があり、たくさんの人も気になります。
おまけに舞台の上に乗るなんて!ジョブス君には耐えられない一日です。
その対応はその年その年でいろんな工夫が考え出されました。
歌は、とりあえず一緒に舞台に上がってみよう→口パクでもいいから目立たないように参加してみよう。といった感じ。
又、機械類が得意なジョブス君には、舞台横にある放送室への出入りが許されました。
先生の指示に従って、煙幕を上げ下げするボタンを押してみる。
放送の音を出したり消したりするボタンを押す役目。等。
そういう指示はしっかりと従えるし、機械の事は任せて!というジョブス君にぴったりな役目。
でも、その仕事のもう一つの狙いは、舞台のできるだけ近くにいて、発表会の雰囲気に少しずつ慣れてもらおう。そして、自分も役目を持ってきちんと参加しているという自覚を持ってもらおう。という暖かな配慮があったのだと思います。
そして中学生に
中学年になると、劇を取り入れるようになり、それは流石に無理だろうと考えた先生は、セリフは与えず、大きな龍の作り物を持って舞台の端から端まで走ってくる。という役目を与えてくださいました。
前日までは若干抵抗を示していたといいます。
そんなジョブス君に先生は言いました。「ジョブス君はいつも本番に強いからね!明日だけしっかりやってくれたら大丈夫!はなまる満点!ジョブス君はもうタイミングは理解してるし、あとは勇気だけだよ。」
その言葉に背中を押されてか、その年もジョブス君はみんなの期待以上に頑張ってくれました。
いつも、態度や言葉には出さないけれど、やっぱり、みんなと一緒に参加したい気持ちだってあるし、大好きな先生や私を喜ばせたい気持ちだってある。
だからいつも、本番の時だけは、勇気を出して、一生懸命頑張ってくれたんだよね。
授業中順番が来てもお返事ができない。意見を聞かれても黙り込んでしまった。
水が嫌で、一度もプールに入れなかった。
ジャージのファスナーは、いつもきっちり上まで閉めないと落ち着かなくて、暑くても、家から着て行った服は、脱ぎたくなかった。
鞄を一式忘れていって、何にもないのに、誰にも気づかれず、一日学校で過ごしていたこともある。
休み時間はみんなと一緒にいるのが苦手で、こっそり職員室の入り口にしゃがみ込む。職員室は学校の端の方にあって、お友達があんまり来ないからね。それに、気配を消していると、先生方のいろんなおしゃべりも聞けて楽しかったんだよ。○○先生が新しいパソコンを買った!とかね。
ジョブス君は決して学校は好きではありませんでした。
雷が鳴る日は、「学校に落ちたらいいのに」と思ったし、火事があったって聞いた日は、「学校が火事になればいいのに」って思った日もあるけれど、たくさんの人の優しさも、お友達と関わる楽しさも、自分はできることがたくさんあるっていう経験も、たくさんたくさん知って成長できた6年でした。
今思う小学校でのポイントは、【こまめな情報交換】と【先生に感謝を伝える事】かもしれません。
こちらが言いたいことを一方的に話す前に、まずはやってくださることに感謝して、情報交換をこまめにし、普段から信頼関係を育んで、その中で、自分の意見も伝えていく。
それが上手くいくコツかもしれないです。